老齢雑感

ーあのとき僕はこう思ってたんだー

平和理念の泥沼と欠陥 国連の前近代性

 侵攻から2年

 

1)ウクライナが追い込まれつつある

 最近、ロシアがウクライナ東部での反々攻で、制圧域を再拡大させている。ウクライナ側は、東部(ドネツク州)を手放さざるを得ないまでに追い込まれている。

 詳しいことはわからないけど、ロシアが北朝鮮とかイランとかUAEとか中国(?)などからの武器や資材調達の体制を、長引く戦火の下で、徐々に整え直して来たってことなんでせう。

 一方で、ウクライナへの支援協力国の中では、支援疲れが起こり、ウクライナ側の武器調達が順調でなくなってきているということなんでせう。

 

2)平和理念の泥沼

 プーチンの侵攻は絶対に許せませんが、でも、他国が加勢なんかしたら全面戦争になるからそんなことやっちゃいけないし、それどころか、ウクライナには侵攻された領域の奪還にしか正義は許されていない。ロシア領内の軍事拠点へのピンポイント攻撃ですら市民への被害を、世界は懸念する(ロシアはここぞとばかりガナリ立てる)。ウクライナ側がロシア領域内への侵攻などを行へば、ウクライナに正義は無くなる。相手は平気でそこを冒して攻め込んできているのに、ウクライナ側にはそれは許されない。

 そういう、世界平和の理念のフレームがウクライナを、世界を、苦しめている。でも、もちろん、それをとっぱらうわけにはいかない。そこは平和主義・人道主義のギリギリの境界線で、そこを冒してしまえば、プーチンを非難することは出来なくなる。

 そういう埒の明かないフレームが、ただただ、ウクライナ、ロシア両国民の人命を奪い続け、負傷者を出し続け、そして、ウクライナ市民の精神も蝕み、世界の戦争の親玉達(戦争関連特権者や武器業者ら)を喜ばせ続けるだけになっている、ということを、改めて認識させられているってことなんでせう。平和理念がための泥沼です。

 

3)平和理念の欠陥 国連の機能不全

 平和理念がなぜ泥沼になるのかと言えば、今まで何度も書いて来てますが、やはり、こういう状況に、国連が機能しないからだと思うのです。こういう状況には、より上位の権威を有するものが両者の間に割って入って裁定するしかないと思うのですが、第二次大戦後、それを期待して生まれた国連は、常任理事国の拒否権という、帝国主義的勝ち負けの特権構図をいまだに温存しているために、前近代的帝国主義を超える存在=世界の裁判所=に成り得ていず、帝国主義的な悪意を結局裁くことができない、と思うのです。

 

4)武力以外に活路を見いだす段階

 昨年(2023)10月に再勃発したイスラエルパレスチナの戦争の歴史を振り返るまでもなく、ほぼ近代の戦争において、武力は他国を蹂躙する侵略・支配の手段にはなりえても、平和的な解決の最終手段にはなり得ず、平和的・非暴力主義的な解決は、話し合うことによってしか(たとえその話し合いが容易に決着を見出し得るものではないとしても)意見調整は成し得なかった筈です。

 調整の着かない不満を武力に訴える事こそ、厳に慎まねばならず、裁かれねばならないことだと思うのです。そのような世界を出現させてこそ、世界は真の21世紀に到達し得たといえるのではないでせうか。

 

5)ウクライナの戦況悪化を世界はどう見ているのでせう

 ロシアの、プーチンのゴネ勝ちが許されるのでせうか? 一層の支援に協力国は再度の足並みを揃えられるのでせうか? 

 もはや、武力以外の解決策を見いだす以外に選択の余地は無くなってきているのではないでせうか。もちろんここでウクライナを見放すことなんか道義的にも許されないとしても、たとえば、トランプはやりかねなさそうな報道です。バイデンは、一層の軍事支援だけでなく、紛争解決のために例えば中国と話し合いの場を持つとか言えなかったんでせうか? そういうことは考えないんでせうか? 出口の見えない軍事支援の継続が、アメリカ国民の支持離れを招いていると感じないんでせうか? 

 

6)ロシアが鉄壁というわけでもない筈です

 ロシアも今は攻勢を強めていますが、ナワリヌイ氏の死亡問題とか、控えている大統領選挙がらみの問題とか、自身の健康問題とか、さまざまな要素含みであることは間違いないんじゃないでしょうか? 

 ウクライナ支援は、紛争問題の解決の方向に世界の意識を向かわせることこそが、一番の支援なんじゃないでせうか? ウクライナが必死で頑張っている時に、軍事支援も外せないでせうが、紛争解決の別ルートを探し出すことこそが、世界の責務なんじゃないでせうか。

 

・・・・・・・・・・・・2024/2/25 追記・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 2024/2/21放送の 

 NHKクローズアップ現代 ウクライナ侵攻2年 “徴兵拒否”に揺れる社会

  ―相次ぐ徴兵逃れ ウクライナ社会の"亀裂"—

 を、TVerで見ました。見てませんでした。

 ウクライナ社会が追い込まれている様子が報告されていました。軍の暴力を使った徴兵の実態は、NPOのカウンセラーが言っていたように違法行為でせうから、非難されるべきだと思いましたが、ゼレンスキー大統領や幹部らの軍事方針についても、徴兵逃れしている人々についても、第三者の人間がとやかいえる話ではありません。負けられない戦いの悲劇だと思いました。

 大国指導者は(実は随時行われているのかもしれませんが)、やはり停戦への働きかけ、話し合いの場の設定への働きかけに気運を転換させる取り組みを、軍事支援の一方で、早急に加速させるべきでせう。 

 

「730日分勝利に近づいた」 ウクライナ大統領、侵攻2年で 各国首脳、支援継続を約束

 2/24(土) 21:55配信の時事通信社の記事です。その末尾に、

 《 一方、スイスのカシス外相は23日、国連総会での演説で、「今夏までに」スイスで首脳級の「世界平和サミット」を開催する意向を明らかにした。ゼレンスキー氏は1月、自身が提唱する和平案推進のため、同サミットを実施することでスイスと合意していた。》

 とあります。当然ながら、やれることはやっての今の事態なんでせうけど、こういった和平策を、西側だけの"祭り"で終わらないでほしいと切に願うばかりです。