老齢雑感

ーあのとき僕はこう思ってたんだー

見えにくい埋蔵文化財の保護

 文化財を大事にする豊かな心

 

1)日本の発掘方面はお寒い状況か

 

 前回、自分でそうディスりながら

 そのままにしておくのも気が引け、

 文化庁サイトを訪問してみました。

 

 で、やはり、そこにはいろいろと

 事情あったようです。

 

 

2)ディスった内容

 

 ざっくり言うと

 発掘調査にかける費用が

 削られっぱなしという統計を見て

 これが日本の民度かよと

 つい、言っちゃったのですが、

 

 トレースすると、

 (平成27年度までで)

 

 民間工事分は、

 平成4(1992)年の

 212億円がピーク。その後は、

 平成23(2011)年に

 76億円と底打ちし

 平成27(2015)年で108億円。

 つまりピーク時の半分あたりを

 小幅振幅推移状況。

 

 公共工事分は、

 昭和52(1977)年の96億円から

 がんんがん伸びて

 平成9(1997)年に

 1138億7100万円に達した後、

 突然、がんがん右肩下がりして

 平成24(2012)年に

 439億2800万円と

 4割弱まで落ち込み、

 

 平成27(2015)年度は約500億円。

 若干持ち直しはしたが

 それでもピークの4割程度。

 

 いくらなんでも、これじゃ

 削減し過ぎじゃないか、

 まともな文化財保護が

 出来ているのかと

 まあ、誰でもそう思い、

 噛みつきたくなるかと・・。

 

 

3)平成27年以後はどうなのか

 

 令和3(2021)年度の統計によると

 

 民間工事分は、

 令和2(2020)年で139億円と

 6.5割まで回復ですが、

 

 しかし、公共工事分は、

 令和2(2020)年で448億円と

 平成27(2015)年をさらに

 下回っておりました。

 

 

4)平成9(1997)年ころ何が

 

 昭和から平成にかけて

 がんがん増加していった費用が

 平成9年頃、突然、急降下に

 転じたのはなぜなのか?

 

 それに関する、直接的な資料は

 まだ見いだせてないんですが

 

 令和3年に発行された

 

 『道路事業に伴う発掘調査の位置づ

 けと発掘調査費用について』(報告)

 

 という長文資料が、うっすらと

 状況を推測させます。

 

 

5)以下どんぶり勘定推測

 

 この(報告)は、令和元年6月に

 国交省の公開予算チェックが

 行われた際、外部識者から

 「埋蔵文化財の調査費用高くね?」

 という指摘があったことに対する

 文化庁サイドからの回答のような

 ものです。

 

 がんがん伸びた費用が折り返した

 平成9年ごろの話ではなく、

 かくも下がりきった額に対して

 なおも「高くね?」と注がれる

 厳しいまなざし起因の、

 つい最近の(報告)です。

 

 指摘に対し、文化庁サイドが、

 費用積算は基準に基づき適正に

 行われていることとか、

 労務費の詳細な検討とか、

 発掘層が重層していれば

 費用は掛け算になっていくとか

 そもそも文化財とは何かとか

 実施した調査がいかに有意義に

 活用されているかとかを、

 実に丁寧に説明しています。

 長いですが。

 

 平成9年ごろの一大転換についての

 説明はないのですが、

 

 冒頭に、平成6年10月に設置された

 「埋蔵文化財発掘調査体制等の整備

  充実に関する調査研究委員会」

 について触れて、指摘に答え報告を

 まとめる根拠を述べているのですが

 

 この平成6(1994)年の

 調査研究委員会の設置が

 ひとつのヒントかと感じました。

 

 また、その説明あたりに、

 

 「公共工事に伴い実施される発掘調

  査の費用は、事業者側で予算措置

  されている。そのため、発掘調査

  そのものが当該の一部として見ら

  れることもある。」

 

 というような文言もあり、

 こういう理解と解釈でいいのか

 わからないのですが、

 

 公共事業(工事)の

 発注主(開発主)は、

 国や都道府県市区町村ですから、

 それに伴う調査や発掘の費用も

 そこが負担するわけで、

 

 工事会社は少しもふところ傷まず、

 孫請けの発掘調査会社を

 手配したりできる(?)。

 むしろ、その際(わかりませんが)

 おいしい手数料が請求できる(?)

 

 もしそうだったら、

 昭和から平成への、

 費用の爆発的な右肩上がりは、

 そういった、

 額はいくら大きくたって構わない

 的な意味合いのものだった?

 わかりませんが。

 

 そういった状況のさ中に、

 平成3(1991)年から

 平成5(1993)年にかけての

 バブル崩壊期が訪れた?

 

 

6)費用見直しの機運?

 

 上にあげた、

 平成6年に設置された委員会は、

 発掘調査費用を積算する際の考え方

 などもとりまとめたそうですが、

 実は、それこそが主眼だったかと

 また、邪推する次第です。

 

 以後は、失われた20年の

 経済低迷期であり、

 大きな災害も何度もあり、

 文化的費用はとりあえず後回しの

 行政の予算組みの時代だった?

 のかもしれません。

 

 

7)保護は適切に行われているのか

 

 問題は、そこです。

 

 (報告)読むと、

 調査発掘のだんどりや留意点とか

 文化財保護法でのしばりとか

 説明してあります。

 

 工事を請け負う企業には

 おそらく対応部門があって

 一般的にはシステマチックに

 文化財保護対応が行われている

 ように感じます。

 

 ただ、工事届出件数に比べて

 圧倒的に調査件数が低いのを

 どのように受け止めたらいいのか、

 それはよくわかりません。

 (ここは意味合いを勘違い

  しているかもしれません)

 

 また、民間工事での不対応の懸念

 とかもどこかに書いてあったので

 闇から闇へ消えている文化財という

 ようなものも無いとは言えないかと

 思いました。

 

 ピーク時の4割程度でしかない

 現状の調査発掘費用が、むしろ

 適正なレベルであったりするのか

 その辺も全くわかりません。

 

 令和元年の、国交省

 公開予算チェックの外部識者さんと

 「委員会」(文化庁)サイドとの

 やりとりも抄録されているのですが

 

 外部識者さんが、何をもって

 「高い」と言っているのかは

 明らかではありません。

 

 (報告)は、ある意味反論書で

 あるわけですが、読むと、

 文化財保護にかける

 「委員会」サイドの熱意が

 ひしひし伝わってきます。

 

 予算をもっと増やして欲しいとは

 どこにも書いてありませんが、

 必要な費用だということくらい、

 分かって欲しいというような、

 委員会サイドの熱い思いが

 行間ににじんでいます。

 

 日々埋蔵文化財保護に

 真摯に取り組まれている方々が

 おられることは理解し、

 頑張ってもらいたいと素直に

 思いました。

 

 ただ、

 費用が、今のレベルで適正なのか

 そういう資料ではなかったので

 そういう視点の資料が

 どこかにあれば、

 また、行き会えればと思いました。