老齢雑感

ーあのとき僕はこう思ってたんだー

四つ仮名(よつがな)のこと

 

 ことば好きとか吹聴しながら・・

 本件をまとまった形で理解したのは

 初めてでした。

 

1)「あぢきなし」と「あじきなし」

 

  「あぢきなし」ということばを

  古語辞典で引こうとして、

  項目がみつからずうろたえる。

 

  へんだなと思ったら

  「あじきなし」で探していた。

  

  古語辞典を引くとき

  こういうことはよくある。

 

  「居る」は「いる」でなく「ゐる」だとかね。

  

  それはともかく、

 

 

2)「ぢ」と「じ」の区別

 

  なんで「あぢきなし」は「あじきなし」でなく

  「あぢきなし」なんだろう。

 

  なにか、古語のルールでもあるのかなと

  Bingチャットに聞いてみた

 

  そしたら、パキッとした回答はなかったが

  「四つ仮名」ということばが

  その回答の中にあった。

  

 

3)Wikipediaで「四つ仮名」を検索した

 

  四つ仮名(よつがな)は、

 

  「ジ・ヂ・ズ・ヅの4つの仮名をいう。

   現代日本語の多くの方言において、

   これらの音韻の発音の

   統合が起きていることに言及するために

   使われる術語である。」(Wiki

 

 

4)どういうことかというと(どんぶり勘定ざっくり要約)

 

  今多くの日本人は

  「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」を

  同じ音として喋り聞く(「二つ仮名」状態)が、

 

  鎌倉時代は、それぞれを別の音として

  喋り聞いていた(「四つ仮名」状態)。

    

    「じ」(zi)=摩擦音・・※息が少し長い?

    「ぢ」(di)=破裂音・・※息(音)をせき止めて出す?

    「ず」(zu)=摩擦音・・※息が少し長い?

    「づ」(du)=破裂音・・※息(音)をせき止めて出す?

 

     (※は、ほっこりの想像です。

      どんな音だろうかと気になり、

      ネット動画探してみましたが、

      当然ながら、実際音の記録があるわけじゃないから

      想像で音声化するのは皆気が引けるのでせうね

      ありませんでした。)

 

  息を抜かす摩擦音の方は安定していたようですが、

  (せき止めた音を出すような?)破裂音の方は、

  不安定というか、やはり、めんどくさい?からか?、

  音が長くなる方向に変化していったようです。

 

  それが、「破裂音」の「摩擦音」化した

  「破擦音(はさつおん)」というものへの変化(統合)、

  つまり発音しやすい音への変化(統合)こそが、

  今日的な「二つ仮名」に至る紆余曲折の

  根本動機のようです。

 

  ※あれこれの重要・大事なことを殆ど端折ってますので

   ぜひ、Wikipediaの「四つ仮名」をご一読ください。

   以下も同じです。

 

 

5)「二つ仮名」は標準語的な到達点

 

  「二つ仮名」は北関東から九州に到る

  標準語話者のエリアと重なって広がり、

  また、全国的にも、世代的にも、

  ベクトルとしては「二つ仮名」への

  モチベーションが今も働いているらしいですが

 

  東北や島根の方言「ズーズー弁」というのは、

  実は、変化(統合)がさらに進んだ状態で、

  「じ」のみ、または「ず」のみとかになってしまった

  「一つ仮名」状態のことらしいです。

  

  また、大分県の国東半島域は、「じ」「ず」「づ」が

  区別して使われており、つまり「ず」「づ」の方の統合が

  まだ途上の「三つ仮名」エリアなのだそうです。

 

  そして、九州の佐賀から福岡南部、さらに、

  大分の国東半島域を除くエリアから宮崎、鹿児島にかけては

  実はまだ、「じ」「ぢ」「ず」「づ」を区分して使われている

  「四つ仮名」エリアなのだそうです。

 

  沖縄(琉球)は、「一つ仮名」ではあるものの

  琉球諸語的な変化(統合)での「一つ仮名」のようです。

 

 

6)現代仮名遣い的にどうなのか

 

  現代仮名遣い的には、

  基本「じ」「ず」音に統合されている・いく状況に合せ

  「じ」「ず」に一本化するというのが(文科省の?)

  基本の考え方のようですが、

 

  上に書いた方言的な状況とか

  「鼻血(はなぢ)」や「三日月(みかづき)」のような

  (二つの語が結びつくときに起こる「連濁」の「ぢ」「づ」)

  血は「ち」だから「ぢ」じゃないと気持ち悪いだろうとか

  月は「つき」だから「づき」じゃないと気持ち悪いだろうとか

  一本化に収まり切れない事項が山ほどあって、

  例外事項、サスペンデッド事項だらけのようです。

  一方で、「じ」「ず」に寄り切ってしまったものもあったりして

  

  日本語を教える先生方が、

  動画講座で「四つ仮名」を説明されているような

  すっきりしたルールは、実は、多くの例外に

  目を向けないところで成立している

  と言わなければならない状況のようです。

  

 

7)漢語由来のことばはさらにややこしいようです

 

  「地」という漢字を

 

    「ぢ」と発音するのは呉音で

    「ち」と発音するのは漢音だそうです。

 

  「地震(ぢしん)」ということばは呉音のことばで

  「土地(とち)」ということばは漢音のことばだということです。

 

  「ぢ」は決して「土地」の「地(ち)」が濁音化したものではなく

  「ぢしん」は呉音としてもとから「ぢしん」らしいですが

 

  現代仮名遣いでは、その「ぢ」も「じ」と書かせ

  「ぢしん」ではなく「地震」(じしん)と書かすのだそうです。

  「地面」も(ぢめん)ではなく(じめん)が正しいとされるのだそうです。

    

  それならば、

 

  「世界中」は、(せかいじゅう)が正しくて、

  (せかいぢゅう)は間違い(×)かというと、

  ここでは、それも許容(〇)という

  「一貫性のない状況」(Wiki)らしいです。

 

  まあ、生き物のように勝手にばらばらに変化する現象に

  一定の法則を持ち込もうとするのですから

  あちこちでほころびが生じるのは当然と言えば当然

  なのでせうね。

 

 

8)「あじきなし」でなく「あぢきなし」

 

 古語を古語辞典で引くとき

 「じ」「ず」音は

 旧仮名遣いでは「ぢ」「づ」になる場合が多いと思え!

 

 という、「四つ仮名」がらみの問題を

 このWikipedia記事はよくまとめていると思います。

 「四つ仮名」問題の「ものさし」を

 もらえた気がしております。

 

 もちろん、専門的なレベルからすると

 ほんの触り程度だとは思いますが、 

 読書感想文派のレベルにはそれで充分です。

 

 記事の最後に、

 「四つ仮名」を含むことばをアイウエオ順にまとめてあります。

 Wiki筆者の「四つ仮名」問題への熱意を感じます。