老齢雑感

ーあのとき僕はこう思ってたんだー

崩れだした パラレル・ワールド

 

 気が重い

 

1)ロシア人には晴天の霹靂?

 

 9月21日、ロシアで部分的な軍事動員

 令(=命令)が出るやいなや、国外脱

 出を図りたいロシアの人々が、航空券

 予約に殺到したそうです。

 

 今回の軍事作戦は  "戦争ではない"

 から、一般国民に徴兵はかからないと

 いう、政府がもやっと作り出してきた

 空気を、実は、多くの国民が、全然信

 じていなかったってことでしょうね。 

 

 

2)様相はどんどん悪くなっていく

 

 動員は予備役30万人のはなしが、実は

 徴兵数については機密扱いで、

 

  『独立系メディア「ノーバヤ・ガゼ

  ータ・ヨーロッパ」は22日、大統領

  府関係者の話として機密扱いの部分

  には「100万人を徴兵できる」と記

  されていると報じました。』  

  (9/23(金) 21:10配信 テレ朝NEWS)

 

 当然、政権のペスコフ大統領報道官は

 この報道を『嘘だ』と否定しているそ

 うです。

 

 しかし、残念ながら、既に大学生にま

 で召集令状が届いていて、令状が届い

 た大学生の父親が、

 

   「大統領の命令では、『学生は動

    員されない』となっていたのに

    何が起きているんだ!」

 

 と憤っているのが伝えられています。

  (9/24(土) 2:24配信 日テレNEWS)

 

 ロシア国内では抗議デモが多発し、国

 境の検問所には車の大渋滞が発生、イ

 ンターネットでは、徴兵逃れのための

 "腕骨折"指南サイトの検索数が急増

 したりしているそうです。

 

 

3)動員を支持する人々

 

 この事態を、望んでいた人たちもいる

 ようです。一般の動員を望む声が、軍

 部や政権に近い一派から上がっていた

 ことを、少し前のニュースでやってま

 した。

 

 そういう一派の人たちは、これで、や

 っと、本来の"駒数"が揃って、反転

 攻勢に打って出れるわいと、喜んでい

 るのかもしれません。

 

 その"駒"とは、自分以外の、命令が

 くだれば、その命を無条件に差し出さ

 ねばならない役割の誰かなんでしょう

 

 たとえば、

 

 反体制派に、徴兵施設への出頭という

 カマをかけられて、

 

  『「わたしはいかない。別のレベル

   で解決する」と答えた。』

 

 ペスコフ大統領報道官の息子ニコライ

(9/23(金) 14:57配信 FNNプライム

   オンライン)

 

 彼も、そういう考えの一派の人なのか

 もしれません。

 

 

4)自分は別という発想の無責任さ

 

 いつの時代も、どこの国でも、

 

 総動員をかけろ!とかいう人たちは、

 自分が行くなんてことは、端から想定

 していないかと思います。

 

 この戦いを、今、国のためと信じて、

 勇ましく戦っているロシア兵士も当然

 いるでしょうが、

 

 少なからぬロシア兵士がこの作戦の大

 義に疑念を抱き、戦意喪失し始めてい

 ることも報じられています。

 

 だからこその"動員"でもあったわけ

 です。

 

 こういう状況の中でなお、「動員をか

 けろ」とか言いだす、プーチンやその

 一派、作戦支持者の頭の中は、どうな

 っているのでしょうか?

 

 太平洋戦争末期に、敗北を認められず

 戦争終結を引き延ばしつづけた、日本

 の軍部、政権とまったく同じ状況にな

 ってきている気がします。

 (あくまで個人の意見です)

 

 

5)戦争の抑止力

 

 この戦いに、内心で疑念を抱いていた

 多くのロシア国民の今の動揺こそが、

 この無意味で悲惨な戦いの最大の抑止

 力になっていくかと思います。

 

 この動揺は、まともで真っ当な人間の

 真率な心情であり、そこには、誰かの

 企みなんかと比べものにならない重み

 があります。その重みが、

 

 「平原の向こうでの短期の聖戦」と、

 プーチン自らが信じ込んでしまったら

 しいパラレル・ワールド的戦争感覚に

 亀裂を入れ、そしてその同調圧力を、

 現に突き崩しつつある、のではないで

 しょうか。

 

 もちろんここまで頑張ったウクライナ

 の人々の奮闘と、数多の尊い犠牲が、

 その前提にあることは言うまでもあり

 ません。

 

 

6)21世紀で領土侵攻はムリ

 

 じゃあ、ほっこりは、単にウクライナ

 肩入れのぐだぐだを、書き連ねている

 だけなんじゃないか、との声がかかり

 そうですが・・、

 

 以前にも書きましたが、

 

 世界が、帝国主義の時代の残影の中に

 あった第二次世界大戦までの戦争は、

 世界中が、そういう時代感覚を引きず

 っていた中での紛争だったという面が

 強く、その後の、世界平和感覚で、単

 純に裁いたり、評価したりは、難しい

 と考える者です。

 

 もちろん、あの時代が、帝国主義の時

 代感覚だけだったなんていうつもりは

 なく、一方で、民主主義(デモクラシ

 ー)や、世界平和の観念というものも

 同時併行的に成長していたので、戦い

 全てが肯定されるわけでもなく、戦争

 中の非人道的な行為が裁かれるのもま

 た当然ですが、その腑分けは、なかな

 か難しいと思うわけです。

 

 日本軍も、目的はアジアの資源・権益

 侵略でありながら、大東亜共栄圏とい

 う、アジアにおける人民解法をカムフ

 ラージュしました。それは、世界平和

 自由、平等といった理念が無視できる

 ものでないこと十分に了解してたから

 にほかなりません。

 

 そして、第二次世界大戦後の朝鮮戦争

 や中東戦争ベトナム戦争、その後の

 世界各地での軍事紛争を通じて、世界

 は、

 

 世界平和、自由、平等、博愛といった

 近代から譲り受けた理念の崇高さを、

 さらに確認していったと思うのです。

 

 戦後とは、そういう時代だったと思う

 のです。

 

 もちろん、まだ、軍事紛争は、各地で

 発生・継続していますし、国連の常任

 理事国の拒否権とか、勝ったもん勝ち

 の論理=帝国主義の論理を、完全に払

 拭しきれてもいません。世界は、残念

 ながら完全には、前近代から抜け切れ

 ていないということも事実かもしれま

 せんが、

 

 これらの理念が、今日の世界平和の基

 本的な基準の役目を果たし、人々の平

 和で豊かな生活の裏付けの基盤になっ

 いることもまた事実だと思います。

 

 そのような中で、周囲の外交的、その

 他のあらゆる説得を拒否し、時代錯誤

 の帝国主義武力行使で、領土問題に

 乗り出すのは、明らかな国際ルール違

 反だと思います。

 

 それを、止めさせることが、武力以外

 の方策で不可能なら、最終的に武力を

 もって取り締まらねばならないことは

 やむを得ないことかと思います。

 

 しかし、それは、あくまでも、ウクラ

 イナへの肩入れではなく、ロシアの国

 際ルール違反を糺すのが第一目的でな

 ければならないと思います。

 

 領土問題は、あくまで、二国間での解

 決事項で、

 

 勝ち負けを決めるための武力支援では

 ないということが、肝に銘じられてい

 なければならないと思います。

 

 

7)プーチンはわかっている

 

 プーチンは、2014年のクリミア侵攻同

 様、今回の侵攻も、他国に占領された

 自国民の救出と領土回復行為に見せか

 けているのは、一方的な武力侵攻が、

 国際ルール違反として非難されること

 を十分に理解しているからですが、

 

 2014年のクリミア占領が、欺瞞的な、

 武力行使であったにも拘わらず、あの

 時、世界が座視したことが、極めて重

 大な世界のミスで、それが今回のウク

 ライナ侵攻につながっているというこ

 とを、思想家のジャック・アタリ氏が

 述べていました。

 (2022/04/02 NHK ETV特集 

 『ウクライナ侵攻 私たちは何を目

  撃しているのか 海外の知性に聞

  く』)

 

 領土問題は、長年の歴史や、当該地域

 に住む人々の利害や思いが複雑にから

 み、一朝一夕に解決できるものではな

 く、いかなる解決策であれ、かならず

 いずれの国においても批判、非難が生

 じる。その不安が、為政者にはあるん

 だと思います。

 

 自国民から満足、賞賛をもって迎えら

 れるには、100%の勝利以外にない!

 そのためのうまい方法が、自国民と自

 国の領土回復という欺瞞の"特別軍事

 作戦"だったわけです。

 

 

8)でもわかっていなかった

 

 2014年、プーチンはその作戦で味をし

 め、どうせ今回も世界は、適当なとこ

 ろまでしか支援はしないと見くびって

 いたのでしょう。

 

 成功体験に酔いながら、覚めるどころ

 か、その酔いを深めながら、武力行使

 に突入してしまった。

 

 

9)世界は何をどう学ぶのか

 

 国連の加盟国、非加盟国を含めた多く

 の国々が、今回の侵攻をどうとらえ、

 何を学ぶのか、どう対処していくのか

 が、21世紀の今後を大きく左右するよ

 うな気がします。