老齢雑感

ーあのとき僕はこう思ってたんだー

『妹の力』

 

 あちこちシナプスつながります

 

1)『妹の力』

 

 "いもうとのちから"ではなく、

 "いものちから"と読みます。

 

 一言でいうと、日本の古代に、

 女性がどんな存在だったか

 ということを

 推し量ろうとする本です。

 

 著者は民俗学のパイオニア

 柳田國男

 昭和15年創元社刊。

 

 持っているのは、奥付に

 著者検印のシールも貼られた

 初版本ですが、

 古書店で安く買ったもの。

 表紙・カバーの横書き文字は

 右からです。

 

 何十年も前に購入し、

 少し読んで、

 その後ずーっとほったらかし

 だったものです。

 

 7月末造園会社辞めたあとの

 暇にまかせて、

 改めて読み進めた次第です。

 

 

2)巫女的な古代の女性像の復元

 

 日本の古代、女性は、

 巫女(みこ)的な感応力で、

 家の男に助言する力を持っていた。

 

 それは、村落儀礼や国家儀礼

 などにまで組み込まれ機能したが、

 社会の進展と拡大、時間の経過は、

 一方で男性優位意識を進展、

 拡大させ、

 

 巫女的なもの、原始的なもの、

 野卑なものなどがを、

 次第に表舞台から駆逐し、

 今やその記憶すら

 忘れ去られようとしている。

 

 いま(刊行時点で)

 日本全国に残る伝承・昔ばなし

 などを比較検討することで、

 古の姿を浮かび上がらせたい。

 

 ざっくり、

 どんぶり勘定要約すると

 そんな感じです。

 

 

3)読みづらい本です

 

 著者が、日本全国の

 膨大な伝承などにあたり

 この本を執筆していることは、

 読めばわかります。

 

 というか、

 

 『妹の力』は、それを前提に、

 伝承のキーワードや名称が

 次々と登場するので、

 その前提知識がないと、

 チンプンカンプンです。

 

 ネット検索が一般化する以前の

 何十年も前に、少しだけ読んで

 挫折し、その後ずっと積んどく

 だったのは、むしろ当然だったと、

 負け惜しみでなくそう思います。

 

 

4)ネット検索が必須の本

 

 今回、インターネットだけでなく、

 グーグルアースも多々併用。

 

 関連情報を手繰り寄せていくと、

 面白いサイトなどへ

 どんどんサーフィンし

 1つ2つのワードだけで、

 半日費やす、

 ということもありました。

 

 

5)知らない話が山ほどある

 

   目次的には

     (数字は発表年 S=昭和, T=大正)

 

   妹の力・・・・・・・・S14

   玉依彦の問題・・・・・S12

   玉依姫考・・・・・・・T 6

   雷神信仰の變遷・・・・S 2 

   日を招く話・・・・・・S 2

   松王健兒の物語・・・・S 2

   人柱と松浦佐用媛・・・S 2

   老女化石譚・・・・・・T 5

   念仏水由來・・・・・・T 9

   うつぼ舟の話・・・・・T15

   小野於通・・・・・・・S14

   稗田阿禮・・・・・・・S  2

 

 冒頭に、本書のテーマとしての

 タイトル論考が置かれ、

 以下関連論考を配置する

 アンソロジーの形式です。

 

 それぞれの論考の中で、

 山ほどの民話、伝承の

 引用があります。

 

 日本にはこんなにも、

 日本の文化の基底にからむ

 貴重な話があったんだと、

 まず驚きます。

 

 それを自分は

 六十半ばになりなんとする今まで

 ほとんど知らずに生きて

 きたんだ、と、

 些か呆然となります

 

 

6)モヤモヤが晴れる

 

 地方の祭礼とか、

 神社仏閣の年中行事とかの

 ニュースをテレビで観たりして

 日本人としてなんとなく

 聞き慣れてはいるのだけど、

 よく考えると、ありゃなんだ、

 というようなことが、

 どんどん整理されます。

 

 沖縄のほうとかだいぶ晴れます。

 

 

7)あちこちシナプスもつながる

 

 昔、折口信夫の『死者の書』を

 人形劇にした映画を

 岩波ホールで観たのですが

 (川本喜八郎2005年作品)、

 

 記憶がもう定かでないのですが、

 主人公の中将姫が、

 (二上山?)山上で太陽に向かって、

 自ら織った(?)布を

 はためかせるようなシーンが

 あった、ような記憶なんですが

 (違ってたらすいません)、

 

 それが、その時は、どういう意味

 なのかか分からなかったのです。

 

 映画の内容の記憶は

 もう殆ど歳月に洗い流され、

 覚えていないのですが、

 あれは、一体何だったんだろう

 という疑問符の染み跡だけが、

 ずっと頭に残っておりました。

 

 「日を招く話」を読んで、

 そうか、あれは、これだったんだ、

 そうに違いない!と、

 膝を叩きました。

 (ちがうかもしれませんが)

 

 DVDが出ているようなので、

 機会があれば確認してみたいです。

 (ホント違っていたらすいません)

 

 まあ、そんな感じで、

 いろーんなあれこれの

 シナプスもつながる、

 そんな本です。

 

 余談

 岩波ホールは、

 ほっこりの造園会社退社と

 ほぼ同じ頃、その54年の歴史を

 閉じたわけですね。

 こっちは9ヶ月でしたけど。